「新型コロナウイルス感染症に関するストレスについてのアンケート」結果公表

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、現在私たちは大学に行けない、友達と会えないなど様々なストレスにさらされています。

そこで私たちピアサポートルームは、普段行っているストレス啓発の活動の延長として、コロナ禍における東大生のストレスの実態やストレス対処方法などを把握するためのアンケートを実施しました。2020年5月12日から5月18日の期間に実施し、260名もの学生にアンケートにご協力いただきました。

アンケートの結果公表を通して、皆さんがこの状況下で「どのようなストレスを感じ、どのように対処しているか」という情報を共有することで、コロナ禍だけでなく、日常でも役立つ新しいストレス対処法のヒントを見つけ、自身が普段行っているストレス対処法を見つめ直す機会にしていただけたら幸いです。

【アンケートの概要】

実施主体:東京大学相談支援研究開発センターピアサポートルーム
回答方法:Webフォームへの回答 (https://ut-psr.net/2020/05/13/stress01/)
実施日:2020年5月12日~2020年5月18日
回答呼びかけ:ピアサポートルームSNS、東京大学公式Twitter、UTAS掲示板、留学生支援室のメルマガ
回答件数:ECCSクラウドメールアカウントを持つ東京大学学生(院生・留学生も含む)から260件

【目次】

  1. 主な結果
  2. 質問項目紹介
  3. 質問項目ごとの結果
  4. 共起ネットワークを用いた考察
  5. まとめ
  6. おまけ(ピアサポート活動の紹介)

【1. 主な結果】

・COVID-19によるストレスのキーワードは「外出自粛」「対人交流の制限」
・ただし、ストレスの感じ方は人それぞれ
・ストレス対処法のキーワードは「運動」
 ※過半数の学生がストレス対処法として「運動」をし、このうち4割の学生はCOVID-19をきっかけに「運動」を始めていた

【2. 質問項目紹介】

Q1-1. 学年
Q1-2. 性別
Q1-3. 居住形態(アンケート回答時点)
Q2. 現在、新型コロナウイルス感染症関連でストレスを感じていますか?
Q3. Q2でそう感じるのは、なぜですか? (思いつくものをいくつでもお書きください)
Q4. 感染症拡大が懸念される現在において、どのようなストレス発散法を行なっていますか? (思いつくものをいくつでもお書きください)
Q5. 感染症拡大が懸念される現在において、身の回りの人がやっていて、面白いと思ったストレス発散法はありますか?あれば教えてください。 (思いつくものをいくつでもお書きください)
Q6. 外出自粛するようになってから、新たに始めたことはありますか?あれば教えてください。 (思いつくものをいくつでもお書きください)
Q7. もし明日新型コロナウイルス感染症が収束したら何がしたいですか? (思いつくものをいくつでもお書きください)

【3. 質問項目ごとの結果】

▷▷Q1-1. 学年
▷▷Q1-2. 性別

(秘匿性のため5件以下を*で示す。)

▷▷Q1-3. 居住形態(アンケート回答時点)
▷▷Q2. 現在、新型コロナウイルス感染症関連でストレスを感じていますか?

(このグラフのみn=253)

▷▷Q3.  Q2でそう感じるのは、なぜですか? (思いつくものをいくつでもお書きください)

主なストレスになる理由とストレスにならない理由は以上のようになりました。類似単語ののべ出現数をカウントし、出現数の多い語を大きく記載しています。
例えば、ストレスになる群の「外出できない」に関しては、Q2で「とてもストレス」「まあまあストレス」と回答した人のうち「外出」や「行けない」といった単語を回答している割合が多く、「外出できない」の単語を大きく記してします。

▷▷Q4. 感染症拡大が懸念される現在において、どのようなストレス発散法を行なっていますか? (思いつくものをいくつでもお書きください)

類似単語ののべ出現数をカウントし、参加者数で割った値は上記のようになりました。
例えば「運動」に関しては、「運動」に関する単語
・運動
・筋トレ
・サイクリング
・ランニング
・ストレッチ
・体操
などの単語が参加者260人分の回答でのべ27%(78件)出現していたことを示します。

▷▷Q5. 感染症拡大が懸念される現在において、身の回りの人がやっていて、面白いと思ったストレス発散法はありますか?あれば教えてください。 (思いつくものをいくつでもお書きください)

Q5の回答うち、他の回答と重複しなかった回答・比較的珍しいとサポーターが考えた回答を抜粋しました。

▷▷Q6. 外出自粛するようになってから、新たに始めたことはありますか?あれば教えてください。 (思いつくものをいくつでもお書きください)
1位: 運動
2位: 勉強
3位: 料理
4位: オンラインでの対人交流
5位: ゲーム、読書、動画鑑賞、楽器演奏

6位: しっかりとした睡眠、Twitter、プログラミング、家庭菜園、電話、就活、ネットショッピング、家の掃除
その他:スキンケアを入念に、自作パソコンを作る、パズル、ポッドキャストを聞くこと、食事を豪華に、花札、手紙、食事の減量、講談をきく、就寝前のリラクゼーション、写経、鉛筆書き、ペット、自己分析、化粧の練習、妄想、大学生活、ベランダに椅子を設置、ぬか漬けを育てる、Uber eatsの利用、猫を見る、釣り、文芸や論文などのコンテストに応募する、裁縫、曜日感覚を失わないように毎日TV・ラジオ視聴、盆栽、オンライン家庭教師

類似単語ののべ出現数をカウントし、算出した順位は上記のようになりました。外出自粛で新たに始めたこととして、運動、勉強、料理、オンラインでの対人交流といったことが多く挙げられました。

運動でストレス発散をしている人のうち、4割程度はコロナ禍で新たに始めています。
Q4で運動に関係した単語を含む文字列を回答した人(n=73)とQ4・Q6の双方で運動に関係した単語を含む文字列を回答しQ4で運動に関連した単語を含む回答をした73人のうち、30人がQ6で運動を新たに始めたと回答しており、約41%がコロナ禍の中で新たに運動を始めていると考えられます。

結果としては1位の「運動」から下位の項目まで,自分でコントロールできるものが大半を占めていました。

▷▷Q7.もし明日新型コロナウイルス感染症が収束したら何がしたいですか? (思いつくものをいくつでもお書きください)

類似単語を回答している参加者数をカウントし、全体の参加者数で割った値は上記のようになりました。
例えば「外出」に関しては、
・外出
・行く
といった単語を回答している方が、270人中約32%(87名)であったことを表しています。

【4. 共起ネットワークを用いた考察

以下は、皆さんのアンケートの回答結果に基づいて作成した共起ネットワーク図と、それについてざっくばらんに話し合ったサポーターの意見や感想を紹介していきます。 

※「共起」とは、ひとつの文章で一緒に出てくる単語の結びつきのことで、共起ネットワークは単語間の関係性が直感的にわかる図です。
・円が大きいほど出現回数が多い。
・語と語が線で結ばれているかどうかが共起性や関連性の有無を表している
・線の太さが関連の強さを表している

・今回紹介する図は、重複がないように設定しています。
→アンケートの回答の中で多く登場した言葉や、その言葉同士の関連性が、円の大きさや線の太さ、位置関係から視覚的に分かります。

1. 実家暮らしは家族がストレス、一人暮らしは人と会えないことがストレス?

上の図は、Q3. に対する回答を、居住形態ごと(一人暮らし、実家暮らし、寮、その他)に分類した共起ネットワークの図です。

ピアサポーターの感想

・実家暮らしの人だと、「自分1人の時間がない」っていうコメントがちらほらあったね。
・確かに、実家暮らしでもこんなに長い時間家族と一緒にいることってなかなかないよね。
・親とか兄弟も在宅やオンライン授業だったら、大変そう。
・会議やディスカッションの授業とかだと、声を出さなきゃいけないから、他の家族がいる部屋ではやりずらいよね。
・実家は実家でも、自分の部屋がない人はストレスを感じることが多そうだね。
・共起ネットワークとローデータを行き来してみると、1人暮らしの人は人と会えないことでストレスを感じているみたいだね。
・ピアサポートルームでできることってなんだろう。
・今ピアサポでやっている、オンラインイベントの活動も頑張って行きたいね。(よもやま語らいゼミ、ラウンジなど座談会形式のイベントをやっています!)

2. 修士以降は研究、学部1年生はオンライン授業への関心が高い?

上の図は、Q3. に対する回答を、学年ごとに分類した共起ネットワークの図です。

ピアサポーターの感想

・学部1年生は「オンライン」・「オンライン授業」という言葉を使っている人が多かったね。
・「大学」とか「会えない」って言葉とも共起している。
・学部1年生は、入学してから大学に行ったことがない人もいるんじゃないかな。せっかく東大入ったのに実感が持てないかも。
・同期と一回も顔合わせたことない1年生もいるみたい。
・<1年生で週15コマとっており、一日中部屋でオンライン授業を受けるのが辛い。>というコメントも何個かあった。
・オンライン授業になって、課題が多くなったって聞くよ。それで15は余計に大変そう。
・私が学部1年生の頃も15コマ取っていたけど、休み時間に友達と購買に行ったりおしゃべりしたりで、忙しいけど楽しかったかも。
・授業中に横に誰かがいるかいないかでも、ずいぶん感じるストレスの度合いが変わりそうだね。

・修士生は研究について回答している人が多いみたいだね。
・実験とか調査とか、とても影響受けているよね。
・自分の周りでも、当初計画してた研究ができなくなって、プランBに移行した人が何人もいるなあ。

3. コロナ関連で全くストレスを感じていない人は、運動をあまりしていない?趣味が豊富で、すでにストレスの対処ができている?

4. ストレスを感じている人は、特に友人との関わりを欲している?

上記の図は、「Q4. ストレス対処として何を行っていますか」という質問に対する回答を、感じているストレスの度合いで分類した共起ネットワークの図です。

ピアサポーターの感想

・共起ネットワークやローデータを行き来してると、<とてもストレス><まあまあストレス>と回答している人は、友達・家族・コミュニケーションなど、人との関わりを重視する傾向が見えるね。
・他にも散歩やストレッチなどの運動をしている人も多いよ。
・ストレス発散イコール運動と思う人が多いんじゃないかな。
・逆に、全くストレスではない群は、ストレス対処として運動をしている人が少ない印象だったな。
・コロナでストレスを感じてない人は運動を普段からあまりしてないのかな?
・運動をしていても、ストレス対処法として捉えていないだけかも?
・ストレスを感じている群では、友達やゲーム・散歩など、似通ったストレス対処をとってるね。
・方法ストレスを感じていない群の方が、小さい円がたくさんあるね。個々人でいろいろなストレス対処法を持っているってことかな。

5. 新しいことを始められていないからストレス?今までの趣味やスタイルでコロナのストレスも対処できている?

上記の図は、「Q6. 外出自粛するようになってから、新たに始めたことはありますか?」という質問への回答に対し、感じているストレス度合いで分類した共起ネットワークの図です。

ピアサポーターの感想

・<とてもストレス>と<全くストレスではない>と答えた人のQ6への無回答率が高かったね。
・無回答って解釈が難しいけど、もしかしたら、コロナの状況に適応した新しい趣味やストレス対処法を始めたり見つけたりできないからストレスを感じている、ということもありそう。
・それとは逆に、コロナ禍でもストレスを感じていない人は、今までやってきた趣味とかスタイルで、コロナ禍のストレスにもうまく対処できているのかもしれないね。
・外出自粛をきっかけに新しく始めたことって、1人でできることや、自分のペースで自由にできることが多いね。本とかゲームとか動画見るとか。
・外出自粛で行動が制限されている今だからこそ、日常をコントロールしたいって気持ちがこういう結果に現れているのかも。

6. ストレスを感じている群の方が、外出や他者との交流に対する欲求が高い?

上記の図は、「Q7. もし明日新型コロナウイルス感染症が収束したら何がしたいですか?」という質問への回答に対し、感じているストレス度合いで分類した共起ネットワークの図です。

ピアサポーターの感想

・ストレスの度合い関係なく、ショッピングとか旅行とか、外に出て行う活動への関心が高まってるね。
・ストレスを感じている群では、他者がいて初めて成立する活動が多かったね。

【5. まとめ】

多くの分析結果がありましたが、全体をまとめると以下のようになります。

・COVID-19によるストレスのキーワードは「外出自粛」「対人交流の制限」
・ただし、ストレスの感じ方は人それぞれ
・ストレス対処法のキーワードは「運動」
 ※過半数の学生がストレス対処法として「運動」をし、このうち4割の学生はCOVID-19をきっかけに「運動」を始めていた

①「ストレスを(とても/まあまあ)感じている人」:「ストレスを(それほど/全く)感じていない人」=2:1

②「ストレスを感じている人」の方が、新たなストレス対処を始めた人が多い

→運動を始めた学生が多い。(小中高で運動の習慣がなく、大学で運動を始める人は通常では少ない)

③「ストレスを感じてない人」は、日頃の生活の中でストレス対処ができている

→外出できないことがストレスと感じていない
→今までの趣味やストレス対処法で対応できている

④「外出自粛」で新たに始めたことは、1人でできることや自分のペースで自由にできることが多い。

1位: 運動からその他の項目まで,自分でコントロールできるものが大半を占めているのは、行動が制限されているからこそ日常をコントロールしたい気持ちの現れだと考えられる。

→これほど”自分でコントロールできること”を長期にわたってできる時間は逆に貴重かもしれない

⑤COVID-19によるストレスのキーワード「外出自粛」に関して、ストレスの度合いにかかわらず外に出て行う活動への欲求が高い

⑥COVID-19によるストレスのキーワード「対人交流の制限」に関して、ストレスを感じている人の人の方が、対人交流への欲求が高い

ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
この記事を通して、皆さんがコロナ禍だけでなく、日常に役立つ新しいストレス対処法のヒントを見つけたり、自身が普段行っているストレス対処法を見つめ直す機会になったら幸いです。

現在ピアサポートルームで行っているオンライン活動では、「対人交流の制限」がある今だからこそ必要だと思われるイベントを複数行っています。
現在おこなっている “オンラインでの” ピアサポート活動はこちらから確認できます↓
https://ut-psr.net/category/global/
気になったものがあれば、ぜひご参加ください。
皆さんにお会いできることを楽しみにしています!

【6. おまけ(ピアサポート活動の紹介)

ピアサポートルームとは?

ピアサポートルームは、東大生が満ち足りた学生生活を送ることを大切にしています。
そのために、以下の6つの点に寄与することを目指しています。
1. 心身の健康
2. 居場所づくり
3. 人とのつながり
4. 役に立つ情報の交換
5. 自己理解の深化
6. 多様なものの見方の獲得

※ピアサポートルームのHPやTwitter、LINE公式アカウントでイベント告知を行なっています。参加希望の方は是非チェックしてください


・ピアサポートルームHP:https://ut-psr.net/

・twitter:
 本郷キャンパス→ https://twitter.com/utpsr(@utpsr)
 柏キャンパス→ https://twitter.com/utpsr_kashiwa(@utpsr_kashiwa)

Twitter(本郷キャンパス)
Twitter(柏キャンパス)

・LINE公式アカウント追加方法:
 LINEの「友だち」→「公式アカウント」→「東大ピアサポートルーム」で検索→「追加」を押す

イベント紹介① オンライン談話室

・どんなイベント:

Zoom上の談話室。
学年や研究科を超えた東大生との交流ができます。
自由におしゃべりしたり、ミニゲームをします。
・聞くだけ参加もOK。ラジオとして活用してくれている学生さんもいます。

・イベント頻度:月3~4回

イベント紹介② オンラインよもやま語らいゼミ

・どんなイベント:

・東大生同士で集まり、話題提供者から出されたテーマについて自由に話し合う集まりです。
・学部・研究科・学年を超えて話ができるので、意外な発見や新しい見方が得られるかもしれません。
・大学の授業ではあまり長く時間を割いてもらえないような話題、友達とは重い空気になることを心配してちょっと話しにくい話題、それでも気になって考えてしまう話題について、おしゃべりするイベントです。聞くだけ参加もOKです。
・過去のテーマは『趣味は持つべきか?』、『学校で教えて欲しかったことは?』など。

・イベント頻度:月2回程度

イベント紹介③ Virtual Book Festa ~次の一冊を探す会~

どんなイベント

・東大生が本を通して交流し、興味の幅を広げることを目的とした、オンラインイベントです。
・本に限らず、小説、漫画、論文…なんでもOK。お互いに好きな本を紹介し合います。
・互いにおすすめの文献を紹介し、交流の場とすることで、「次の一冊」となるような新たな本に出会う機会とし、興味の幅を広げることを目的としています。

・イベント頻度:不定期

イベント紹介④ あつまれ駒場の部屋~オンライン交流編~

・どんなイベント:

・オンライン上で盛り上がれるアクティビティを用いて、東大生同士の交流を深めるイベントです。
・駒場キャンパス所属のピアサポーターが運営しています。駒場キャンパス以外の学生も参加可能です。
・「リレー小説」「専門用語しりとり」など実施予定です。

・イベント頻度:不定期

活動紹介 ぴあサポメルマガ

・どんな活動:

・学生ピアサポーターが執筆した学生のためのメールマガジンを、月に一度のペースで配信しています。
・学生生活の「ちょっと困った」に対するアドバイスやヒントを発信しています。
・5月には「Zoom疲れの自分研究」「Zoom疲れの自由研究」と、Zoom疲れに関する記事を連載で配信しました。

・配信:月1回程度

・メルマガ登録はこちら:

https://b.bme.jp/bm/p/f/tf.php?id=ut_psr

・バックナンバーはこちら

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後まで読んでくださってありがとうございました。
先行きが見えない中不安の多い日々かと思いますが、そのような状況に対処する一つの術として、ピアサポート活動もぜひ活用してみてください。