コミュニケーション・サポートルームを紹介します!

コミュニケーション・サポートルームとは?

人とのコミュニケーションに関する悩み、注意力の問題、他の人と違う考え方・感じ方に関する悩みなどについて相談する窓口です。自分の悩みが発達障害(自閉スペクトラム症や注意欠如多動症など)に関係があるのではないかという相談にも応じます。
(公式HP http://dcs.adm.u-tokyo.ac.jp/csr/ からの抜粋)

本郷コミュニケーション・サポートルームの利用案内

・場所:プレハブ研究A棟2階
・日時:月~金曜日 10:00~17:00 休日・年末年始除く
・予約制(ホームページ、電話、現地に来室して、のいずれからでも可能)

※駒場・柏キャンパスにもありますので、ホームページをチェックしてみてください!


インタビュー

「コミュニケーション」や「発達障がい」というキーワードに思い当たったら行ってみる相談先、という感じでしょうか…!
早速インタビューしていきたいと思います!

今回は、実際に相談活動を担当されている臨床心理士の先生にお話を伺いました。
先生、よろしくお願いします。

ーーまずは予約についてお聞きします。相談予約はどんなきっかけで入るのですか?基本的には予約を取って来る形のみですか?

ご本人から入る場合が45%(昨年度)、あとは保護者または教職員からと、周りの相談機関からの紹介もあります。

それで、申し訳ないんですが予約制です(汗)ふらっと相談したいときはまず、なんでも相談室の方に行ってもらうと良いと思います。そこの職員さんと一緒に2階に来て、うちの予約をする方もいます。

でも一番多いのは、発達障がいじゃないかと自分で考えて来る場合ですかね。また、うちの名前を見て、コミュニケーションに不安があって来られる方もいます。

ーー今予約すると何日くらい待つ感じになりますか?混みやすい時期は?

今年の4月から相談員を増員して、割と入りやすくなりました。最近は、当日でも空きがある場合があります。1週間以内には、大体予約できます。

例年4月は学部ガイダンスで宣伝するため、来る方が多いですね。それと、2月3月は社会人になる前の駆け込みで来られる方が多くなります。あとは就活関連で、4、5月くらい。日々の学業とか人間関係は大丈夫でも、就活になるとちょっと困った、という方が来られることもあります。自信がなかったり、「本音と建前」の使い分けが苦手だったりという方も多く、余計に悩んでしまうことはあるようですね。

ーーCSRにはどんな臨床心理士さんがいらっしゃいますか。

みんなバックグラウンドはバラバラです。認知行動療法、来談者中心療法をバックグラウンドとしていた人、発達障がいの子どもの療育やスクールカウンセリングなどしていた人もいます。でもみんな発達障がいの方の臨床や支援、相談に興味があって来ています。室長は発達障がいの専門医です。

ーーカウンセラー間でケーススタディや会議をして共有することもあるんですか。

来談者の方には初回に「サービス向上のために、匿名化して相談記録の使用」や「特に検討が必要な場合での会議での個人情報の利用」についての同意を得ています。困ったときにカウンセラー同士で相談したり、会議を設けたりはしています。その場合も、できるだけ誰がどうなっているという特定はしないようにして、こういう人がいてこういうところで困っていますとか。学生さんにより良いケアや支援を提供できるようにして、お互い向上して還元できるようにしていますし、相談を受ける上での自分たちのメンタルヘルスについてもシェアしています。

ーー他の相談機関と比べて、CSR独特の支援内容はありますか?

大きく違うのは、私たちの方から情報提供をすることが多い点です。私たちも心理士で、他機関と同じように本人からお話を伺い内省を促す「カウンセリング」もしていますが、やり方を提案したり教えたりする「ガイダンス」や「コーチング」もしています。

もう一つ大きな特徴は、すでに発達障がいの診断を受けられた方向けの「修学支援」などを行っている点です。障害者差別解消法といって、そういう人には大学が合理的な配慮をしなければならないと決まっているんですね。学生さんの指導教員や教務課の職員にお会いして、障がいの内容と、どういうところに配慮すればうまくいくかを提案します。

ーーそういった中で心掛けていることがあれば教えていただきたいです。

発達障がいの方は脳の情報処理のしかたが違うということがわかってきていています。外観には表れないため、私たちも含めて周りの人はついついそのことを忘れそうになります。だからこそ、サポートするためには常にそれを意識して接することが必要です。

自閉スペクトラム症は人口の1%とか、ADHD(注意欠如多動症)は4%から6%とか。でも、病院に行かないと診断が付かないのと、いわゆる「グレー」と言われる、少し特性がある人を含めると、実際は10%とか言われているんですね。左利きの人と同じくらい。左利きの人に使いにくいものがあるように、少数派の人には生活しにくいところがあります。障がいという言葉がついているけど、それが悪いということではなく、特徴を理解して歩み寄ろうということです。コーチングでも、無理に押し付けたりはしない。こうやると上手くいくかも、と紹介するスタンスでいようと思います。

ーー怒られたり、否定されたりすることが怖くて相談機関へ相談しにくい人もいるかも、という意見が(記事担当の)ピアサポーターの間で出たんですよね。人によっては強く受け取っちゃう人もいるでしょうし…。

なるほど、気を付けよう…。できるだけ何か利益になるようなことを持って帰ってほしいから、こういうものもありますよと話はするけど、押し付けはたぶんしてないと思います。

ーー少し話を戻して、多数派と少数派が歩み寄るということだったと思いますが、利用者さん個別にどんな難しさがありますか。例えばさっきの修学支援だと。

身体の特徴などと違って目に見えにくいので、周囲の先生方は努力不足じゃないかと言ってこられることもあります。そういうとき、例えば「いつも遅刻しちゃうとか、時間の見通しがうまく立てられないのはADHDの特徴で、脳のこの能力がうまく機能しないのでそうなっている、決して怠けてるわけではない」というのを説明するとわかってくださる先生もいます。

また、それとは別に学業や研究の「合理的配慮」の問題があります。特に「研究」は、何が「研究の本質」なのか?、つまり、どこまで教員等が配慮するのかという判断は難しいです。

ーー話を変えて、ここではIQテストも受けられると聞いたことがあるのですが。

Twitterなどで出回っていましたね(苦笑)。実はその目的だけでの利用はお断りしているんです。受けたい気持ちはわかりますが…。

CSRとしては、実際の生活で困っている方への支援に力を入れる必要があるというのが主な理由です。

ーーあくまで、コミュニケーションや人付き合い、発達障害についての困りごとの相談や、修学支援がメインの場所で、IQテストもその一環なんですね。

はい。それと例えばADHDの場合、遅刻をよくしたり、研究をスモールステップで積み重ねていくのが苦手だったりもしますが、そういうコミュニケーション以外の部分にも、コーチングで関わっていくこともあります。補助すると、だんだん自分でできるようになる方もいます。

ーー自分が発達障がいかわからない人だと、利用するか迷うこともあると思うのですが、どういったサインが出ていれば、検討するといいのでしょうか。

実は、発達障がいの特性は誰しも少なからずあるんですよ。悩んでいないのならいいのですが、何かうまくいかなくなって悩んだ場合にはすぐに来て欲しいです。研究や勉強なども努力が足りないからダメだと思ってしまったり。でも実はやり方がよくわからないだけで、わかるとできるようになったり、それがきっかけでモチベーションも上がったりすることがあるんです。例えば研究なら、指示内容や課題のどこが難しいのかを共有して、もう少し先生にやり方を指南してもらおうとなったり。就活ならここで具体的に会社の調べ方とか、就活の方法を一緒に考えたりできます。「初めに、こんなことで困っている」と伝えていただいてもいいですし、「何に困っているかわからないけど、困っている。うまくいかない」などでもいいです。簡易検査の結果、今のままやってみましょうと一回で終わる方もいます。多いのは、いわゆる「グレー」と言われている方で、診断はつかないけどちょっとその気があるということなんです。

ーーグレーの場合でも、1回で終わることがあるのですか。

発達障がいの診断基準に、コミュニケーションが苦手、ADHDなら忘れ物が多いなどの項目が載っています。その最後に「これらの症状・特徴で社会生活が障害されているか」という項目があって、ないと診断がつかないんですね。環境によることなので、IQテストでも能力の凸凹と環境のマッチングを見ているんです。そういうお話を一通りして、ご本人次第ですが相談を継続せずに自分だけで困りごとに取り組んでみたいとなることもあります。

ーー反対に、継続して相談しようという方への支援というと?

さっき話した修学支援以外だと、研究や就活を長いスパンで計画して進めるとき、一人だと、普段の生活で忙殺されてできなかったり、ギリギリになってしまったり。そこでCSRをペースメーカー的に使われる方もいます。1週間の振り返りをして、次の1週間で何をしようか整理していく感じです。また、発達障害の枠組みで自己理解をしていくことで、人付き合いや日常生活をどのように過ごしていくか、どのような工夫ができるかを一緒に考えていくこともあります。

ーーなるほど。最後に、こちらを利用される学生や、まだ利用したことがない学生へのメッセージをお聞きしたいです。

ネットなどで調べて自分が発達障がいじゃないかなと思って、悩んで何回も見ちゃうとか、行こうかな行かないかなと思う人はぜひ来てもらいたいです。スタッフみんなやさしいですし、「こんな悩みで来たの?」とかは言わないです。

ーーありがとうございました。

インタビュー日時:2019年7月12日

※本文中の用語・制度・法令・資格等はインタビュー時点のものです。