駒場学生相談所って?
学生生活を送る中で、今までにない失敗をしたり、いろいろなことで悩み、疑問を持ったりするのはごく普通のことです。学生相談所ではそれらの問題を通して自分を見つめ、見つける手助けをしています(ホームページより)。
今回は、駒場学生相談所の松島公望先生にお話を伺いました。
場所:駒場Ⅰキャンパス1号館3階
開室日時:平日10~17時(昼休みの13:00~13:50を除く)
目次
- 駒場学生相談所の概要
- 教職員との連携について
- 他の相談機関との違いや連携について
- 駒場学生相談所の現状について
- 学生同士の支え合いについて
- さいごに
- 駒場学生相談所の概要
ー駒場学生相談所でされていることについて、簡単に教えてください。
メインは学生からの相談です。加えて、学生をメインにしてどういう風に対応すればいいか、というアドバイスをするコンサルテーションを保護者や教職員に行っています。相談の申し込みは、直接来所、電話、駒場学生相談所HPのお問い合わせフォームで受け付けています。なお、利用者の人数や学年などのデータは公表していません。
ー利用したいと思ったら、どれくらい待つことになりますか。
今日話したいと言って学生が直接来ることもよくあるのですが、当日空いているケースの方が少なく、早くて2-3日、場合によっては1-2週間ぐらい先になってしまうのが現状です。
ー日本語以外での相談は受け付けていますか。
相談は、日本語のみで対応しています。
カウンセリングなどでは、センシティブなところまで細かいニュアンスを汲み取る必要があり、中途半端な形ではなく責任をもって対応したいと考えているので、日本語だけで対応しています。
一方で、やっぱり日本語では難しいという学生には、留学生支援室などの他の適切な相談機関を紹介しています。
ー例えば、「こういう相談でも来ていいんだよ」というような内容はありますか。
相談に来る学生のうち一定の割合の方が「こんな相談でもいいのか」というようなことを言うんですね。ただ、その人にとってやっぱりしんどいことはしんどい、その人にとって大切なことは重要なことなので、「自分の悩みはちっぽけなんだ」と思って苦しいのを我慢するのではなく、相談に来てほしいなと思います。自分の中でそう思うことで相談に来るのを躊躇するのは避けてほしいなと思っています。
- 教職員との連携について
ー学内の教職員と連携することはありますか。
学生が相談に来られて、その学生の先生と連携することもありますし、逆に教職員から学生について相談に来られることもあります。その後の相談のプロセスは場合によりますが、いずれの場合もその学生にとってより良い形を模索して教職員と連携しています。本人の研究や学びが進むように、教職員とも定期的に細やかなコミュニケーションをとって支援する場合もあります。教職員と連携する場合、学生のプライバシーや抱えている問題について、駒場学生相談所から勝手に教職員に伝えることはありません。
ーHPに記載の学生相談所協力教員制度について教えてください。
我々は発達心理学、青年心理学、臨床心理学を専門としていますが、学生たちの専門は様々ですよね。いわゆる理系文系という言い方もできるし自然科学、社会科学、人文科学など色んな領域を専門にしている学生がいます。学生が専門領域の相談をしたいという場合に、駒場の教養学部や総合文化研究科の様々な領域の先生に協力教員として関わってもらっています。直接申し込む場合もあれば、私たちが面談したときに協力教員を紹介する場合もあります。色んな先生から話を聞くことによってヒントをもらえる機会もあると思うので、生き方や大学生活なども含めて、先生の経験談もぜひ話してくださいとサポートをお願いしています。
ーこの制度は駒場独自のものですか。
そうですね、もう何十年もやっています。少なくとも私が着任した時からあるので30年程度はこのような制度が続いています。教養学部全体で学生相談所も含めて学生をサポートしていく体制をとっていることの一つの現れだと思います。
- 他の相談機関との違いや連携について
― 本郷の学生相談所など他の相談機関との違いはありますか。
本郷の学生相談所と駒場学生相談所の違いは、対象学生の違いだと思います。駒場には、前期課程の1・2年生が約7,000人おり、1年生は感覚として「高校4年生」の場合もあります。特に一人暮らしの学生など、健康で元気だけど適応できない子がいます。生活が作れない、ということ自体も大きな問題ですよね。駒場学生相談所はカウンセリングだけでなく、生活をどう作っていくかについての相談も多いです。
また、本郷には学生相談所とは別に総合窓口がありますが、駒場にはありません。そういう意味では、駒場学生相談所は総合窓口のような役割もあります。基本は学生を対象にしているという部分では総合窓口の全ての機能が駒場学生相談所にあるわけではないですが、全てが面談ではなく、受付で対応できる部分もあります。受付が丁寧に対応して、案内をしたり話を聞いたりといった形で、窓口機能にそれなりの裁量を置いているという部分では、他の機関と少し違うのかなと思います。
加えて、他の相談機関は、バリアフリー、ハラスメント、コミュニケーションサポートなど、専門性がそれぞれの名称の部分で明確になっています。それに対して、一番ざっくりしているのが学生相談ですよね。駒場学生相談所は、学生の様々な状況を含めながら、どのように生活を送るかというところのサポートをするのが特徴かなと思います。授業支援だったり、ハラスメントだったり、コミュニケーションだったり、様々な形の支援と重なる部分がありますが、学生相談所ではその人のアイデンティティ、つまり、どう生きていくか、どう生活していくかをサポートしています。もちろん、学生の話を聞いていて、ある傾向がより顕著な場合にはその傾向に見合った部署を紹介します。例えば、障がいのことで支援を相談したいという場合にはバリアフリー推進オフィスを紹介します。一方で、そこも明確でない時は一度話を聞いて、そのまま学生相談所で対応するということもあります。常に学生が中心であり、ニーズがあれば他の相談機関と連携をとるというような形で、結果的に特定の機関との連携が多くなることもある印象です。学生が、何に困っていて、どんな機関と連携をとるとその学生がより前に進めるか、ということに基づいて我々は連携しています。
- 駒場学生相談所の現状について
― 相談に来る学生一人一人と向き合って、その学生のニーズに応じて周りの方とも連携をとられているんですね。駒場には約7,000人の学生がいる中で、限られた人数の担当相談員で対応する現状に対してどのように思われますか?
現実問題として、全員に相談が必要なのかと言ったらそこも様々だと思います。混んでいるからといって相談員を増やすと、その分だけ相談が増えていくんです。1・2年生だけで7,000人弱いるところでどこまで対応できるかというのは限られているかもしれないけれど、我々は我々で精一杯やらなくちゃいけないし、今ある中で最善を尽くすことを考えています。だからできる限り枠も増やしています。それでも足りていないのは分かっていますが、現状の中で最善を尽くしたいとは思っています。全てに応えられているわけではありませんし、どこまでという部分は難しいところだなと思っています。
― 相談機関を利用するハードルを感じている学生もいると思うのですが、支援を必要とする学生にリーチするために工夫されていることを教えてください。また、課題に感じていることはありますか。
4月には、教養学部1年生に向けてビデオでの紹介、総合文化研究科の大学院生に向けて新学期ガイダンスでの紹介を行っています。また、『駒場の学生生活』や『相談窓口案内』など、新入生には必ずアピールする場を作っています。ただ、本人が「必要だ」と思っていないと読み流してしまいがちです。だから我々がやるべきことの一つは、「必要だ」と気づいたときにヒットするような形でパンフレットやホームページを用意をしておくことかな、と思います。ちなみに、『駒場の学生生活』はとてもよくできていて、駒場キャンパスにおける学生生活に必要なことがほぼ記載されています。また、『相談窓口案内』もコンパクトではありますが、この中には駒場キャンパスにある学生をサポートする施設が全て記載されていて、困った時にとても役に立つと思います。
- 学生同士の支え合いについて
ー私たちピアサポートルームのような「学生同士の支え合い」に期待してる役割はありますか?
実は今日のインタビューにあたり、相談所のスタッフから「この部分だけは熱く語ってきてほしい」と言われていたくらい、まさに一番お伝えしたいポイントがそこにあります。学生相談所には日々多くの学生が訪れますが、私たち大人のスタッフと話すよりも、ピア、つまり仲間や少し年上の先輩(お兄さん・お姉さん)と話した方が、一気に元気になるのではないか、と感じるケースが多々あるのです。大学という環境は、自分から主体的に努力をしないと関係性が作りにくく、孤独(砂漠化)を感じやすい場所です。その点、ピアサポートはある程度お膳立てされた形で、気軽に交流できる場を提供してくれます。
特に1年生や2年生が直面する「履修の悩み」に対して、先輩たちの経験談は大きな救いになります。例えば理科類の学生の場合、2年の春学期(S1ターム)は物性化学、生命科学、実験などが重なって非常に多忙ですが、それが終わるS2タームは一転して時間が空きます。「1年生のときにもっと授業を減らしておけばよかった」と後から気づく学生が多いのですが、こうした大学生活の見通しを俯瞰的に説明してくれる場はなかなかありません。英語、初習外国語、情報、初ゼミ、ALESS/ALESAなどに追われている前期課程の学生にとって、同じ大変さを乗り越えてきた先輩からのリアルなアドバイスだからこそ、大人の言葉よりも心に深く寄り添うことができます。
駒場でピアサポートルームの活動が活発に行われているのであれば、相談所の受付に来た学生に対して「ピアサポートルームに行ってごらん、優しい先輩たちが待っているよ」と直接繋ぐことができます。大人だからこそ埋められない「溝」のようなところをピアサポーターが埋めてくれるのは、すごく意味があることです。また、学生だけで活動すると潰れてしまうリスクもありますが、専門の先生が関わっていらっしゃるピアサポートルームであれば、適切なアドバイスや受け皿があるという点でも非常に心強いですね。
ー我々ピアサポートルームは駒場での相談会も開催しているのですが、告知がうまくいかないのが現状です。
相談所だけで約7,000人の学生を支えるには限界があります。だからこそ、全員が相談所に来る必要はなく、それぞれが持っている知見や資源を融合させることが大切であり、そこから生まれる「相乗効果」に何よりも期待しています。
専門の教員やスタッフによる確かなバックアップ体制を持つピアサポートルームが、学内の他部署と上手くタイアップできれば、学生へのフォローは2倍、3倍、あるいは何十倍もの相乗効果を生むはずです。お互いの強みを掛け合わせてコラボレーションを進めることで、駒場の学生たちに対するセーフティネットをより大きく広げることができます。我々も最大限協力させていただきますので、ぜひ一緒に形にしていきましょう。
- さいごに
ー今日はお時間を作ってくださりありがとうございました。
皆さんの活動には本当に大きな可能性があると思っています。せっかくこれまで前期課程を乗り越えてきた経験をお持ちなのですから、それを活かして歳の近い先輩として駒場生に向けて活躍していただけるというのは、私たちにとっても非常に嬉しいことです。ぜひ、駒場の方にも目を向けて活動を広げていただけると大変ありがたいです。本日はわざわざ駒場までお越しいただき、ありがとうございました。また今後とも本当によろしくお願いします。
